日本観光研究学会の2015年度総会およびシンポジウムが2015年5月30日、立教大学新座キャンパスで開催されました。シンポジウムのテーマ「今求められる、こころを軽やかにする観光」は文部科学省科学研究費(基盤研究(B)「メンタルヘルスツーリズムの展開」代表:小口孝司教授)を得て研究が進められているテーマであり、当プラットホーム荒川教授は分担研究者で参画してきております。
現代日本では、メタボリックシンドロームや糖尿病の改善や予防対策とともに、精神的な健康問題への対策は、とりわけ労働者にとって喫緊の課題であります。2015年12月からは、従業員50人以上の企業には従業員の精神的な健康状態をチェックすることが法律でいよいよ正式に義務づけられました。チェックはしたものの、いかにしてこころの健康を図るかの具体的な方策は明示されていないなかで、観光がどのように寄与できるか、そこには観光が大きな社会需要を獲得する機会が到来しているのではと考えられます。
シンポジウムでは司会を文教大学の山口一美教授が務め、計6名のシンポジストによる最新のメンタルヘルスツーリズム研究知見や国内外の動向が話題提供されました。立教大学の小口孝司教授は、心理的効用から旅を推進するメンタルヘルスツーリズムを世に提案した研究者で、本シンポジウムの企画意図を概説しその意義と展開を紹介しました。千葉大学の大江靖雄教授は本邦におけるグリーンツーリズムの第一人者であり、グリーンツーリズムをベースにしたメタルヘルスツーリズムの可能性について言及しました。九州大学の浦川邦夫准教授は応用計量経済学者で、精神的健康が人々の社会経済的地位(SES)とどのように関わっているか、またメンタルヘルスツーリズムの経済効果について解説しました。立命館アジア太平洋大学のTimothy Lee教授は世界で最も活発な観光研究者の一人であり、世界的な観光研究の観点からヘルスツーリズムの現状について概説し、出身国である韓国の事例も紹介しました(通訳:日本交通公社・岡田美奈子氏)。荒川雅志教授からは、各省庁のヘルスツーリズムに関わる政策的動向を紹介し、日本再興戦略のなかに位置づけられる次世代ヘルスケア産業の視点からヘルスツーリズムを再定義する試みや、沖縄でのメンタルヘルスツーリズム実践事例を紹介しました。

最後に、日本観光研究学会副会長で日本交通公社理事の梅川智也先生より、日本全国の観光地事例を俯瞰した立場からメンタルヘルスツーリズム研究にみる課題を提起いただきつつ、併せて大きな期待が寄せられました。観光系の全国学会でヘルスツーリズム、メンタルヘルスツーリズムを主要テーマとするシンポジウムの開催は本邦初の試みとみられます。国策として動き出したヘルスツーリズムの可能性と期待が、学術も動き出しいよいよ次のステージに突入したことを感じさせる記念すべきシンポジウムとなりました。(写真はTimothy Lee教授の講演)

Lee教授講演