水中可視光通信技術と水中癒し技術の組合せによる新たな健康増進癒しサービスの共同開発

荒川 雅志  琉球大学観光産業科学部
上間 英樹 株式会社マリンコムズ琉球
村田 英雄  国際潜水教育科学研究所

沖縄の地域特性を活かした研究として、ダイビング前後の生理心理学的効果や、アクアスパWATSU(ワッツ)の効果検証など、「海を利用した健康増進プログラムの研究」(琉球大学 荒川雅志)を有望な技術シーズに、沖縄県のものづくり企業「マリンコムズ琉球」が開発した世界初のLED水中可視光通信機器を海中での指導が円滑に行われる支援技術として融合させ、沖縄発で世界初の水中癒しを目的とした機器の開発・ソフト開発を近年おこなっています。
従来のレジャーダイビングでは、水中の景観や海洋生物の観察などが主目的ですが、本共同研究では「癒し」を目的にダイビングは目的を達成するための手段と位置付ける新たな試みであります(図1)。サンゴの少ない海域(例えば浅瀬や砂底の海域)でもサービスが可能となり、環境に負荷をかけることのない新サービスの展開と新しい観光メニュー創出が期待されています。また、十分な活用がされていない公共施設やホテル施設の室内プールの有効活用策としての意外な展開もみえてきました。水中会話を可能とする機器を用いることで、リアルタイムな指導と顧客の心身の状態管理が可能となり、健康に安全安心を付加した高付加価値型サービスの創出が可能となります。
SPA(スパ)産業における新しいメニューとしての展開や、さらにメンタルヘルスなど医療分野への応用可能な事業化に向けた知財の確保(特許出願)を進めています。

荒川)ドリームチーム研究会天野先生講演会20150216

水の特性を活かした心身への効果がベース

水の特性を活かした水中リラクゼーションや水中運動については、陸上と比べて様々な優位性と恩恵があることはよく知られています。特性とは大きくは浮力、水圧、水温、抵抗が挙げられます。「浮力」により体重は陸上の約10分の1になり、全身、膝、腰、関節などへの負担軽減効果があります。また、重力からの解放によるリラクゼーション効果が期待できます。一方、水の「抵抗」は空気の約12倍あるといわれ、あたりの柔らかい自然な負荷であると同時に、三次元的な負荷による優れた筋力運動、ダイエット効果が期待されます。「水圧」によって血管や筋肉が圧縮され、心臓のポンプ作用が強くなり、血液循環の活性化が促されます。体温以下の「水温」では、体温低下を防ごうと熱産生機能が活発化し、エネルギー消費、脂肪燃焼が陸上より高まります。水中では新陳代謝が活性化すること、水中運動では自律神経(交換神経、副交感神経)機能が向上されることも報告されています。高度情報社会、ストレス社会の進展により、さらなる効果の追求や究極の癒しを求める方向に世界は向かっているといえます。海外スパサロンでは、精神生理実験用から派生した水面浮遊をするための専用機材「フローティングタンク」(アイソレーションタンクとも呼ばれる)の導入がみられ、究極の浮遊体験を標榜した癒しの差別化を図っています。フローティングタンクはタンクに入りフタを閉めることで音刺激、光刺激、体性感覚を遮断しますが、我々のプログラムは「潜水」することによって、よりよい癒しを得る環境条件を優位にコントロールできると考えています。水の特性を活かした水中フィットネスやリラグゼーション法はすでに世の中に山ほどあるなかで、水中会話で安全安心のもと、いよいよ海底に横たわってしまうという全く新しい体験が待っています。これらを使って例えば『水中瞑想』『水中禅』などを手軽に自由に体験できたとき、どのような感覚世界へいざなうでしょうか。

脳波、心拍リアルタイム計測による安全および効果性検証

世界的にも有数の透明度とダイビングスポットして名高い、沖縄県慶良間諸島に位置する座間味村阿嘉島が共同研究チームの主な実証実験フィールドでした。リラクゼーションの指標となる脳波α波を計測しようとする際に、海水に耐久性のある測定方法は世界中を探しても皆無でした。そこで測定のためだけに特注ヘルメットを製作し、阿嘉島の美しい海底においておそらく世界初であろう、潜水という特殊環境下におけるリアルタイムの会話指導による呼吸法デモストレーションを実現しました。

座間味島での実海域脳波測定実験

座間味島での実海域脳波測定実験

座間味島での実海域脳波測定実験3

座間味島での実海域脳波測定実験3

水中におけるゲストの生体情報を把握できるツールの開発

LED水中可視光通信機器で水中会話ができることによって、『海底が壮大なフィットネススタジオ』となった瞬間でありました。水中でいつでも声掛けができることで、ゲストの状態管理ができ安全安心の価値も生み出しました。我々はさらに生体情報をリアルタイムにモニタリングできればより安全性が高まると考え、水中でのリアルタイム心拍計測も試みました。特許先願調査では、風呂桶での心拍監視など医療用に数件しか出願されていないことから、共同研究の一環にマリンコムズ琉球の得意とするLED技術、センサー技術と防水技術(特願2013-044327)をベースとした水中用心拍計を開発してしまおうということになりました。現在、水中における計測器(LEDを用いた心拍計)について試作し基本的な計測に成功しています(特願2013-205857  平成25年出願)。
こうした実海域での実験も続けながら、生体データの蓄積と様々な機器最適化を進めるための安定した環境として、公共施設やリゾートホテルのプールでの潜水実験も開始しました。リゾートホテルのプールは、シーズンの夏場以外は十分利用がされていないケースが多く、我々の水中癒しをメニュー化することでプールの有効利用を促進し、ゲストに新しい観光コンテンツを提供できる可能性も広がりました。

リゾートホテルプール実験開始

沖縄から世界へ

本共同研究は、レジャーダイビング(海中景観が目的)としての従来の認識から、環境負荷の少ない海域、何もない白い海底砂地こそ、壮大なフィットネススタジオとみたて、健康癒しの場、「海は健康資源」として180度価値転換を図るという、これまでにない全く新しい価値提案への挑戦であります。沖縄発のものづくりと沖縄発ソフトの融合による、レジャー産業からヘルスケア市場開拓が期待される新たなライフスタイル・イノベーションであります。あらゆる分野への応用が考えられるなか、しっかりとした専門知識と技術を持った人材育成(認証制度)も進めていく計画です。沖縄からくつろぎと癒しの環境を提供する独創的なプログラムとして世に発信できる日を楽しみにしています。

水中の特性を活かすリラクゼーション組み合わせ

様々な応用可能性